【小さなヒント016】子どもとテクノロジーの関わり方について②

前回は時間を決めて関わる分には大きな影響はないという研究結果から、うまくつき合っていく方法を探していくのがいいのではないかということを書きました。今回はそれとは少し視点を変えて、「テクノロジーの進化」と「待つ」ことの関係について、気になっていることを書きます。

テクノロジーの進化によって、私たちの生活の中で「待つ」ことがずいぶん少なくなってきました。できるだけ短時間で、できるだけ手間をかけずにということが進化の方向であったため、これは当然の結果です。様々なものが時間短縮され、無駄が少なくなりました。例えば誰かに要件を伝えたいとき、携帯電話の普及によってすぐに相手に電話で伝えることができるようになりました。留守だったから伝えられなかったということはほとんどありません。また手紙で何日かかけて届けていたものも今はメール等で瞬時に届けられます。毎日の生活でも同じです。例えば食べることでは、調理器具の進歩によって食事の用意も早くできるようになりました。水耕栽培のキットを最近見たんですが、どこでも簡単に育てられるだけでなく、栽培期間も短縮できるようです。移動についても同じ。飛行機や新幹線などもどんどん増えていて、以前は行くだけで1日が終わっていたような場所でも数時間で行けるようにもなりました。

やりたいことがすぐにできる、しかも短時間でできるようになったのが、今の私たちの生活です。そのおかげで思ったことがすぐに実現されない状態、つまり待つことが少なくなりました。「待つ」は解消されて当然のこととなり、私たちは待たされることに対してあまり寛容ではなくなってきているのが現状だと思います。

このことは子育てにも影響を与えていると感じていて、例えば子どもを待たせることを避ける傾向もみられます。食事の際、子どもを待たせてはいけないということで準備ができた順に食事をしたり、ある人数がそろい次第食事を始めることも増えているようです。このように子どもから待つ機会を奪ってしまっていいのでしょうか?待つことで身に付く情動をコントロールする力、衝動を我慢する力は人間にとって大事な力です。我慢する力は対人能力の基礎となりますし、様々な困難さに向き合う力にもつながっていきます。待つことが少なくなった現実を考え、私たちの保育園では意識的に「待つ」場面を多く作っています。食事のときも全員が揃うまで待って食べるようにしています。

でもこの待つことが単なるお預けになってしまっては意味がなく、待つことの先に楽しさを感じられることが大事です。待つことでみんなと一緒に楽しく食事ができる、待つ先には楽しい遊びがあるといった風に先を示してあげると、子どもはちゃんと待つことができます。待つ時間を時計を使って具体的に示すことも有効です。

テクノロジーの進化によって便利になった今だからこそ「待つことを子どもたちにどう体験させるか」は、私たち大人が考えなければいけない大きな課題です。生活の中に「待つ」場面がどのくらいあるか、その場面の先には楽しみが待っているかといったことを、一度ゆっくり確認してみることをおすすめします。